静岡県浜松市に生まれた画家・清川泰次(1919-2000)は、慶應義塾大学在学中に独学で油絵をはじめました。卒業後は二科展や読売アンデパンダン展などで作品を発表していましたが、それまで描いていた具象表現に疑問を抱くようになり、1951年から54年までの渡米を機に、本格的に抽象表現の道へ進むことを決意します。
その後、清川は、少しずつスタイルを変えながら、色、線、面の構成により生み出される美を探求し、70年代から80年代には、白く塗ったカンヴァスに細い線を引いたシンプルな表現に行き着きました。しかし、最晩年の90年代に入ると、色彩が復活し、様々な色で幾何学的なかたちや線を描くようになります。その探求は、平面作品だけでなく立体作品にもおよび、ステンレスや木を素材に、彼の絵画に通ずる、シンプルなかたちを追求した彫刻の数々を制作しました。
本展では、清川が1980年代以降に制作した絵画と彫刻、あわせて20余展をご紹介します。ものを写すことに捉われない独自の抽象表現で精力的に制作を続けた清川が、晩年に、平面と立体という二つの表現で創り出した色、線、かたちの美をご覧ください。