斎藤吾朗さん(1947年愛知県西尾市生まれ)は、赤を大胆に使った鮮やかな色彩やダイナミックな構図で、温もりやユーモアあふれる独特な作品=赤絵を描き続けています。
1973年、20代半ばの吾朗さんは念願のパリへ渡ると、自身の絵を模索しながらヨーロッパ各地をスケッチしてまわり、パリ・ルーヴル美術館では、《モナ・リザ》の日本人初となる公認模写を果たします。この貴重な体験をきっかけに、自分の描くべきテーマは「母なる故郷」にあると確信すると、帰国後は、ふるさとの三河地方の風土や、そこに生きる人々を描きはじめます。「赤絵」の赤は、三河の赤土や夕陽、炎、血など、万物の根源につながる「いのちの赤」です。そこには、生きる喜びや受け継いでいくことの大切さといった普遍的なメッセージが込められており、吾朗さんの眼差しは、故郷を原点に、私たちが生きる現代社会、人間の本質へと向かっていきます。
この展覧会では、初期の《モナ・リザ》模写を含むこれまでの代表的な油彩画をはじめ、刈谷を題材した新作、愛知の祭りや風物を描いた版画など約60点を展示します。さらに、懐かしい昭和の日用品や道具など、吾朗さんが長年蒐集してきた膨大なコレクション「ガラクタ美術館」から、選りすぐりの品々もご紹介。三河発の「赤絵」の軌跡をたどり、愛知の魅力を再発見しながら、あなたの「ふるさと」を感じてみてください。