作家が風景に出会う時はどんな時でしょうか。
そこにそそぐ光、風、それによってゆれる草木や影、ざわめく音、行き交う人々…世の中ではとらえきれないくらいたくさんのことがいろんな場所で同時に起きています。作家は時に風景を求めてさまよいながら、時に立ち止まりながら、風景をとらえようとまなざしをそそぎ続けます。とどまることなくうつりかわっていく世の中を全身で感じながら。
鑑賞者が風景画に出会う時はどんな時でしょうか。
たとえば美術館の展示室という静かな部屋で、そこに描かれている山や川、空、街のネオン、人々やいきものの営み…を目にします。さらにその明暗、影の長さ、草木がなびく様子を作品にみとめると、そこに光や風、時間の流れといった「動き」を感じることでしょう。わたしたちは、作品をひとつひとつ巡りながら、時に立ち止まりながらまなざしをそそいでいきます。その時、わたしたちもまたそれらの風景をとらえているということに気付かされます。とどまることなどないはずの時間のなかで作品を目にしながら。
風景をとらえるのは、なにも作家だけではありません。美術館という場で作品を鑑賞することは、それぞれの作家のまなざしを共有することでもあるでしょう。当館所蔵の風景にまつわる作品をめぐっていきましょう。