原倫太郎は、「動く」作品を作っています。空間の中でモノが回転したり、反復したりといった単純な運動をくり返すことで、作品は光と影によって微妙な表情を見せます。近年は、室内に張りめぐらしたテグス糸の上を、複数の球がゆっくりと同時に転がり、重力によって下降していく繊細な作品を発表しています。白い壁のギャラリーだけでなく、民家などに設置することもあり、三次元空間の特性を引き出します。動く物体とすでにある環境が響きあい、ユニークなインスタレーションの体験が生まれるのです。原の作品はモーターなど電気的動力を用いるため、20世紀に盛んとなったキネティック・アート(動く美術)の系譜を引き、今日でいうメディア・アート(電子機器等の先端テクノロジーを用いた芸術)に含めて考えることもできます。原はコンピュータによる作品も手がけますが、機械によってモノが動き、空間が変容することへの素朴な驚きが大きな魅力となっています。公開制作によって空間がどのように変わるのかをお楽しみください。