マリメッコの生地(きじ)、イッタラやアラビアの食器、アアルトの家具……フィンランド生まれの日用品は、日本で本当に人気です。今では日本人の暮らしにとけ込んでいると言ってもよいかもしれません。なかにはフィンランドのものとは知らずに使っている方かたもいらっしゃることでしょう。では、なぜ遠く離れた国フィンランドのデザインが、これほど私たちの心をとらえるのでしょうか。
フィンランド・デザインの核心にあるもの、それは「人間と自然との調和」の理念です。天然素材を活かすことはもちろん、例えば、木の葉型の木皿《レヘティ》、しずくをイメージしたガラス器《カステヘルミ》など、デザインの中心には自然があります。極寒の冬や夏の白夜など、時に厳しい環境の中でも、森の恵みを大切にして生きるフィンランドの人々の生き方そのものとも言えるかもしれません。実は、こうした人と自然の調和を重んじる自然観は欧米諸国では珍しく、むしろ私たち日本人の伝統に親しいものでしょう。
さらに、「すべての人の生活、社会に寄り添うデザイン」を目指した日用品は、流行に左右されることなく人々の日常を彩り、長く愛され続けています。家族とともに年を重ねるアアルトの家具、食卓を楽しく飾るカイ・フランクの食器、赤ちゃんからおばあちゃんまで似合うマリメッコのドレス。私たちは、デザインを通して、目の前の生活、ささやかな幸せを大切にするフィンランドのライフスタイルに触れ、憧れを抱いだいているのかもしれません。
フィンランド独立100年を記念する本展では、19世紀末の工芸品から今日こんにち第一線で活躍するデザイナーまで、フィンランド・デザインの歩みのすべてをご覧いただきます。実際に名作の椅子に座れるコーナー、気軽にご参加いただけるミニワークショップなど、楽しい企画もご用意しております。緑豊かな都立府中の森公園に立地する美術館で、フィンランドの暮らしを感じていただければ幸いです。