アーティストメッセージ
こんにちは、井上涼です。私はここ数年、美術をテレビ番組を通して紹介するという仕事に生活の半分くらいを使って過ごしてきました。その中で、いろいろなアーティストの人生に触れ、彼らがどうアートと暮らしたかを知りました。離島でひとり絵を描いた人や、平和のために絵を描いた人、自分で耳を切った後も絵を描いた人など、「どんだけ~」と思うほど彼らはアートに人生を費やしていました。それらのことを知り、自分にとって作品をつくることは? アートとはなんであろうか~?と考えずにはいられませんでした。私もアーティストを名乗る端くれなのです!
そして、考えた末に得られた答えは「ウケ狙い」です。歴代のアーティスト諸先輩方に対してあまりに小さいテーマですが、この10年と少し、私はウケたいがために作品を作ってきた、という答えが一番嘘のないものでした。これが古くから言い伝えられる「関西人の血」というものでしょうか。ですから、私の作品は難しく考えず単純に楽しんでくださればよいと思っております。それが、数多くの偉大なアーティストの人々に対してでも、私が臆せずに言える唯一の意志です。
開催趣旨
兵庫県立美術館では2010年より毎年「注目作家紹介プログラム〈チャンネル〉」を開催してきました。8回目の今年は、兵庫県小野市で生まれた井上涼(1983~)の個展を開催します。
井上は美術大学在学中から言葉と音とイメージが絶妙に戯れあう映像作品を制作してきました。大学卒業後、商業デザイナーなどを経験した後、作家活動に専念。数々の映像作品を生み出す一方で、ライブ・パフォーマンスなども精力的におこなってきました。時に社会的なメッセージも潜ませたユーモアあふれる作品は、幅広い世代の心を揺さぶる力強さを持っています。
本展では、「忍者と県立ギョカイ女子高校」と題する井上の新作映像インスタレーションが登場します。井上の独特の言葉使いとメロディに乗って空間に映しだされる作品の舞台は、魚介類が通う女子高「県立ギョカイ女子高校」。主人公は忍者Bと忍者C。空間のいたるところに繰り返し現れる忍者Bと忍者Cを追いかける物語が、ひとつのミュージカル作品のように展開されます。見る、聴く、感じる、笑う、泣く。本展は、人間の感情や感覚が凝縮された井上涼ワールドの魅力と謎に迫ります。