今年で東京芸術大学の油絵科の教官を退官する中西夏之(ナカニシナツユキ)(1935-)は、白を背景に、淡い草色、薄紫色、ベージュ色などの線状の形体をつなぎながら、繊細さに溢れた画面を丹念に構築していく油絵画で知られる作家です。中西は、1958年に東京芸術大学の油絵科を卒業、画家としての道を歩み始めました。初期には「韻」という、白地にT字型を連ねた抽象画の連作を制作しています。
1963年、中西は赤瀬川原平、高松次郎とともに、3人の名字のはじめの1文字を英語読みにした「ハイ・レッド・センター(Hi Red Center)」を結成します。彼らは奇異な化粧をして山手線に乗ったり、白衣を着て銀座に出現し、掃除をするなどのパフォーマンスを行い、世間を驚かせました。中西はそうした所謂”芸術”に反するような行為の後に絵画に回帰、1970年代から今日まで一貫して、柔らかく詩情に富んだ抽象絵画を制作しています。
本展では、当館の所蔵する21点の素描が一堂に会します。これらの素描の作品は、完成された絵画に至るまでの諸階段を見せてくれます。作品を制作していく途上の、画家の思考の断片を感じることのできる、貴重な機会となるでしょう。