子どもたちに向けた、モダニズムの新たな文化が花開いた大正期。自由な風潮のなか、『子供之友』は、1914年(大正3)4月に婦人之友社の創業者羽仁もと子、吉一によって創刊されました。その後、1943年(昭和18)に第二次世界大戦下における用紙制限によって休刊するまでの30年間、子どもの自立による近代的な人間育成を一貫して掲げ、生活教育を積極的に展開した絵雑誌として、童話や伝記読物、漫画やクイズなどの多彩な内容で多くの子どもたちから愛されました。
創刊より絵画主任を務めた北澤楽天の洒脱でユーモアあふれる表現に竹久夢二の豊かな情感が加味され、、『子供之友』は当初から高い芸術性を誇りました。後年、童画家第一世代と呼ばれる武井武雄、村山知義らも独自の作品を発表し、休刊まで多彩な画家たちの魅力的な作品が毎号を飾りました。
本展では、北澤楽天、竹久夢二、武井武雄、村山知義を中心に、最終号を飾った深沢紅子にいたる数々の画家たちが『子供之友』のために描いた原画150余点を一堂に展示し、その芸術性とともに、絵雑誌における子どもに向けた美術の世界を紹介するものです。また、原画とあわせて、雑誌『子供之友』も展示します。子どもたちを取り巻く社会環境が激動する今だからこそ、『子供之友』の歩みは、未来の大人である子どもたちに何をすべきか、その指針を与えてくれるに違いありません。