古代ギリシャの哲学者アリストテレス(BC384~BC322)は、著書『詩学』の中で「仮に誰かが極めて美しいいろいろの絵具を使って描いたとしても、ただ絵具の流れ出るにまかせて構図もない塗り方であるならば、ものの形を輪郭正しく素描しただけの絵が惹き起こす喜びにも及びはしないであろう」(※)と、絵具における構図の大切さを述べています。
平面上に描き出された絵画には、自然の風景や想像の世界など、何らかの新しい空間が表現されますが、画家たちは一体どのようにして、これらの絵画空間を作り出しているのでしょう。
点を繋げると線になり、線を繋げると面になるように、どんなに複雑に見える絵画も、点、線、面という要素に還元することができます。その中でも、線はものの輪郭や画面の奥行を表す働きを担い、線によって囲まれた面もまた、色のかたまりとして画面の空間構成に一役買っています。
本展では、線と面がもたらす視覚的な働きに注目して、バウハウスで活躍したジョセフ・アルバース(1888~1976)の版画集『私の公式と表現思想』や、切り紙絵を原画としたアンリ・マチス(1869~1954)の版画集『ジャズ』のほか、近現代の画家たちによる油彩画を紹介し、画家たちがそれぞれの作品に込めた表現上の工夫とその効果をひもときます。線と面をヒントに、絵画の世界を探検しましょう!
※訳:今道友信
谷川渥監修『絵画の教科書』平成18年6版より孫引き。