明治維新150年を目前にして、「さつま→かごしま~幕末、明治の郷土美術」を開催します。明治4年(1871)年の廃藩置県によって、薩摩藩は鹿児島県へと生まれ変わりました。むろん単なる名称の変更ではなく、明治維新は日本史上、最も大きな変革の一つでした。欧米列強からの外圧によって受け入れざるをえなかった日本の性急な近代化を、鹿児島の美術を一例として考えてみる展覧会です。
日本画では、御用絵師として長く幕府とともにあった狩野派の末裔としての小松甲川、四条派を伝えるとともに志士としても活躍した平山東岳、また、一時島津家に雇われ、新しい日本画の制作にまい進した狩野芳崖などをご紹介します。
一方で、西洋絵画はその迫真的な描写が衝撃を与え、多くの日本人画家が熱中していきますが、反動的な国粋主義のうねりなかで、変転していきます。ここでは初期洋画を代表する床次正精を追ってみましょう。
幕末から明治にかけて和歌で一派をなし、宮中での指導にもあたった桂園派があり、鹿児島からも多くの歌人を輩出しています。八田知紀、高崎正風、税所敦子らの書をご紹介します。
薩英戦争のなかで壊滅的打撃を受け、西南戦争後に完全に製造が途絶えた薩摩切子、開国により、海外への輸出品としての需要が急増し、作品も変化していく薩摩焼など、工芸の世界も大きく変容していきます。ここでは、江戸時代の切子をはじめ、12代沈寿官や東郷寿勝などの薩摩焼を見てみましょう。
当館の所蔵品を通し、美術という視点から日本の近代化を垣間見ていただけたら幸いです。