棟方志功は板画家として著名であるが、その出発点は油絵であり、棟方の最初の画集は昭和17年に出版された「棟方志功画集」という油絵画集であった。
絵画に興味を持ち、画家になりたいという想いを抱き始めていた頃に棟方はゴッホの油絵と出会い、油絵画家を目指した。昭和3年の帝展入選を機に版画を始めるようになったが、油絵を描くことはやめなかった。「わたくしは、油絵を描くことが、板画や日本画を為すよりも、わたくしを更に真裸にしているのを知っています。描写ということの意義甚大を憑くようにわたくしは油絵に執ります」と、その魅力を捨てられなかったのであろう。戦時中、絵の具の入手が困難だったころも、わずかに残ったチューブから絞り出しては好きな油絵を描いていたという。秋の展示では棟方志功50年の画業の中での初期から晩年までの油絵作品を紹介する。