1966(昭和41)年に開館した長野県信濃美術館は、善光寺隣の城山公園内にあります。数多い信州の美術館の中でも唯一の県立美術館として50年にわたって活動し、長野県ゆかりの作家の作品と信州をモティーフとした近代風景画に重点を置いた豊かなコレクションで知られています。本展は長野県信濃美術館の全面的なご協力を得て、約4000点のコレクションから選りすぐった76件をご紹介します。
展覧会構成は長野県信濃美術館の収集分類を参考にした日本画、油彩、彫刻の各分野からなり、明治から昭和にかけての日本近代美術の歩みを辿ります。日本画では菱田春草、西郷孤月、横山大観ら日本美術院の中核作家と、荒木十畝、菊池契月、矢沢弦月ら官展系の作家たちの作品が揃います。菱田春草の代表作のひとつ《羅浮仙》など、いずれも必見です。油彩ではフランスに学んだ中村不折、細密描写で独自の絵画世界を生んだ河野通勢から、前衛芸術家として世界的に知られ、2016年に文化勲章を受章した草間彌生までをご紹介します。安曇野市出身ながら米国籍を取って没年まで長く暮らし、国吉康雄とも親しかった臼井文平の作品は愛知県で目にすることは稀ですが、母国を離れて制作した画家たちの歴史に新たな光を投げかけることでしょう。彫刻では荻原碌山、石井鶴三、菊池一雄の優品が並びます。また広い面積を持つ信州ならではの美しい風景に惹かれた作家たちが多いことから、小セクション「信州の四季」を設けて画家たちの受けた感動を分かちあいます。そして1960年代以降、内外の賞を受けて活躍した池田満寿夫の版画をまとめて展観し、その業績を振り返ります。
作家たちのきらめく個性、そしてそれらが生むハーモニーを、どうぞお楽しみください。