ヒノギャラリーでは2017年7月3日(月)より「増田聡子 -庭にて-」を開催いたします。
増田聡子は1980年代より、植物や光、大気といった自然の生命力を想起させる有機的な形象と、独特の色彩が特徴的な絵画作品を発表してきました。初期作品は有機的形象に加え、幾何学的形象もたびたび画面に盛り込まれ、さらには、シェイプド・キャンバスと呼ばれる変形のキャンバスを支持体にすることで、より大胆で独創的な表現を生み出してきました。あらゆる方向から絵画の可能性を追求してきた増田ですが、2000年に入ると、キャンバスは矩形のものへと徐々に変化し、かつて画面に見られた色彩や形象の複雑さは削ぎ落とされ、より描くことに純粋で原初的な表現へと移行していきます。
今回発表する作品について、作家は次のようなコメントを残しています。
庭にて - 風と森
風と森の地を想い 庭仕事をする。
あらゆる土地を耕すことは出来ないし 全ての神秘を知ることもできない。
まずは 足元にひとつぶの種子をまくように
今 この有り様をひと筆ずつ刻んで行く。
2016.8 増田聡子
目に見えない自然の未知なる力や豊穣な力、容易につかむことのできない、かたちのない領域を描きだし自己に問い続ける作家の営みは、これまでも一貫しております。ただ、以前の作品からは混沌の中から生まれるある種の異質性、それは自然(生命)の力強さや逞しさと言い換えられるかもしれませんが、そういったものをあえて拮抗させ、共存させようとしていたように思います。しかし、近年はそうしたものをも包括し、より俯瞰的で柔軟な視座で自他と向き合い、そこから芽生える素直な感情をキャンバスへと向けているように感じます。それは前述の作家のコメントからも、また近作を見ても明白です。
ヒノギャラリーでは約3年ぶりとなる今回の個展では、新作タブローはもちろん、昨年参加した2016茨城県北芸術祭にて発表した、国・県無形文化財指定の西の内和紙に描いた四曲一双の屏風作品、そして三幅対の掛け軸作品も展示いたします。よりのびやかでしなやかに変化した増田聡子の絵画を是非お楽しみくださいませ。