天から、あるいは地から、沸き出づるように現れる龍は、天地=自然さらには生命を象徴しています。また、権力者にとっては権威の象徴であり、民衆にとっては水を司る神でもあります。そして神話や説話にもたびたび登場する龍は、現代に生きる我々にとって一番身近な空想上の生き物といえましょう。
全身を鱗が覆い蛇のように長い胴、鋭く長い爪を持つ手足、そしてワニのような大きな口と角の生えた顔というように、誰もが思い描くことができるその姿形によって、古くから描かれてきました。明治以降、新しい時代にふさわしい絵画を目指した画家たちは、その決まった姿形の龍をどのように表現し、それぞれの個性を発揮してきたのでしょうか。南北朝時代から江戸時代までの龍図とともに近現代の画家たちの作品を紹介することで、その模索の軌跡を考えます。同時に、展覧会を通じて、龍という伝統的なモチーフがいかに多彩で魅力溢れる表現を生み出してきたのかを示していきます。