1980年代後半から、デジタル・テクノロジーを駆使したメディア・アートと呼ばれる美術が登場してきました。その流れは日本をはじめ中国、韓国などの東アジア地域にも及んでいます。日本の岩井俊雄、高谷史郎、八谷和彦などはその先駆的存在といえ、先端技術を取り入れたデジタル映像やインタラクティヴな〈相互作用のある〉作品を発表して注目されました。また中国のワン・ゴンシン、フェン・メンボーや台湾のユェン・グァンミンなども、コンピュータを使用した作品を制作するアジアの作家としてヨーロッパ、アメリカ、そしてアジア各地で開催される展覧会に参加し、国際的に活躍しています。
しかし、デジタル・テクノロジーを中心とした先端的な技術が脚光を浴びる一方、スライド・プロジェクションなど新しい技術が生まれる以前のアナログ的な技術を使いながらも、豊かな内容を表現している作品の存在も見落とすことができません。韓国のコン・スンフン、台湾のウ・ティエンチャンのローテクを見事に使った作品にはアジア独自の表現を感じることができます。
このほか本展では、ニューヨーク在住の中国人作家、シュ・ビンのアルファベットで構成された疑似漢字を生成する作品や、これからの活躍が期待される日本の若手作家minim++、クワクボリョウタ、鈴木康広の作品を展示し、東アジア地域で試みられているローテクからハイテクに至る多彩なテクノロジー&メディア・アートの世界を紹介するとともに、その将来を考えます。