美術の世界において、室内空間は作品が生み出される場であり、静物画や肖像画、風俗画として古くから描かれ続けてきた主題の舞台でもあります。19世紀以降、絵具チューブの発明などにより、戸外での絵画制作が容易になると、印象派の画家たちを中心に光あふれる自然風景が盛んに描かれました。しかし同時に、外界から守られた平穏な空間の象徴でもある室内に改めて目を向けた画家たちもいました。
本展では当館の所蔵品から、何気ない身近な情景を温かなまなざしで描いたアンチミスト(親密派)と呼ばれるボナール、室内装飾のモチーフを絵画を構成する重要な要素としてとらえたマチスの作品を起点に、安達真太郎、岩下三四、堀之内一誠ら日常に潜む美を愛しんだ日本の洋画家たちもご紹介します。
画家のアトリエや家庭など、私的な空間ならではのくつろいだ雰囲気を描いた作品から、室内を彩る物たちが主役の静物画まで、室内空間をめぐる多様な表現をお楽しみください。