文筆家としても知られた鏑木清方は、晩年に、随筆集『こしかたの記』『續こしかたの記』を世に出し、半生を振り返りました。自らの制作や日常生活から、画壇や出版界、演劇界、そして人々の暮らしや風俗にまで触れた随筆は、近代日本の文化史資料としても高い評価を受けています。
今年、刊行から50年を迎えた『續こしかたの記』(昭和42年・中央公論美術出版)には、大正初期から戦後鎌倉に移り住んだ晩年までの日々が綴られています。官展の改革、関東大震災、太平洋戦争――激動の時代の中で清方は、模索と前進を繰り返しつつ、理想の美を求め続けました。
本展覧会では、『續こしかたの記』の文章をご紹介しながら、同時期の名品とともに、清方の歩みを辿ります。