池田龍雄展の開催にあたって
神田日勝記念美術館々長・学芸員 菅 訓章
『蜻蛉の夢』という池田龍雄の絵画論集がある。新聞連載の文章に幾ばくかの小論を加えたもので、画廊香月のオーナー香月人美さんから頂戴した、今、それに眼を通している。この画廊は緑川俊一さんの個展で訪れたのが最初である。その当時僕は企画展を担当した「神田日勝と新具象の画家たち」展の日本美術史上における同時代の画家たちに思いをめぐらせていた。池田龍雄氏はその一人であり、今なお精力的に作品を制作され、多くの個展を始め展覧会に出品を続けている。
画家個人とも画廊香月で出会った。香月人美さんの画廊は池田龍雄展を中心に企画を展開する熱烈な池田氏の支援者である。それにしてもその年は随分と池田氏に遭遇した。黄昏の銀座の画廊街で偶然の遭遇を繰り返し、丸木美術館、青梅市美術館等で作品展を渉猟し、REIJINSHAの個展では乾杯の発声という場を与えられた。
画廊香月での語らいでは氏の社会観や歴史認識に触れ、衰えを知らない青春を感じ、もう一方で神田日勝の晩年の作品にうかがえるシュールと池田作品に時代的共通性を感じた。
本展により池田龍雄の業績の一部に触れることが出来れば企画者の望外の喜びであり、軽井沢のアトリエで作品の鑑定、梱包、画家との調整に当たられた香月人美さんに深甚なる誠意を表したい。