山口蓬春(1893-1971)は、東京美術学校日本画科を卒業後、伝統的な技法を基盤とし自然風物、それも草花の華やかさは、身近な美の対象として生活のなかに彩りを添えるだけでなく、伝統絵画のなかにも描きとめられてきました。元来、中国よりもたらされた花鳥画は、やがて日本の四季折々の風土のなか、日本人の美に対する豊かな表現と共に発展をとげ、見る人々の心に愛しみ慕われてきたのです。日本画家・山口蓬春(1893‐1971)は、自身の絵のモティーフとするために、四季折々にあわせ多くの草花を庭園に育てていました。野鳥も訪れる旧山口邸の閑かな佇まいのなか、在りし日の蓬春は庭園で季節の風を感じながら草花を写生し、それら遺された作品群から蓬春の自然を愛でる気持ちを垣間見ることができます。
「花鳥畫の、作品の優劣は、その作家の自然への愛の深さと、觀察の力の如何とのみが決定すると謂っていい。」(山口蓬春「花鳥畫を描く心」『邦畫』4月号、昭和10年〔1935〕より)
本展では、蓬春が描いた草花の日本画や写生を中心に展示し、かれが愛でた四季の花々のその煌びやかな世界をご覧いただきます。