芦原義信の設計による「中央公論ビルディング」(1956年)、「駒沢公園体育館・管制塔」(1964年)、「ソニービル」(1966年)、「モントリオール万国博覧会日本館」(1967年)など10の代表的な建築に加えて、芦原の建築や外部環境の理念を伝える「武蔵野美術大学鷹の台キャンパス」(1964年)を紹介します。
当館が所蔵する20万点に及ぶ「芦原義信建築アーカイブ」の中から100点以上の手描き図面や写真などの建築資料、さらには1950年代初頭ハーバード大学大学院に留学当時の課題図面など貴重な個人資料も展示します。また、会場内のタッチパネル端末によって図面や写真を中心とした全300件の芦原作品資料の閲覧もできます。
アーカイブに残された約4万点の手描き図面は、現在のCADデータによる図面とは違い、技巧に裏打ちされた緻密な鉛筆の運びによって描かれています。図面表現から見える設計者の意思や姿勢、複数の図面から設計プロセスを追うことにより浮かび上がる設計思想、さらには当時の建築設計への情熱が実感できます。またアーカイブには、精密で端正な手描きの構造図や設備図も含まれており、構造設計の織本匠(1918-2001年)や設備設計の犬塚恵三(1924年-)との緊密な連携が芦原の作品の根幹を支えていたことが読み取れます。
本学キャンパスを写真家の村井修/有川幸雄と百瀬俊哉が新たに撮影した写真展示を通して、美術大学として50年以上を経たキャンパスの姿と魅力を新たな角度から浮かび上がらせます。さらに実在の建築をどのように記録していくかという観点から、キャンパスを2年以上延べ650時間にわたって撮影してきたタイムラプスによる映像ドキュメントのインスタレーション展示、モバイル端末などを使った初期キャンパスのCG再現アプリなど、新たな建築アーカイブの試みも体験できます。
※本展は「文部科学省私立大学戦略的研究基盤形成支援事業(平成25-29年度)」の採択を受け、2013年からスタートした武蔵野美術大学造形研究センターの研究プロジェクト「近現代建築空間および生活デザインの高度なデジタル・アーカイブ化と、生活文化空間の総合的研究」の成果を公開する目的で企画されました。