多摩美術大学テキスタイルデザインの系譜は、1935年に多摩帝国美術学校が創立した当初、図案科において染色教室として始まりました。本展では、多摩美術大学に縁のあるテキスタイル教育の現場を担当した作家たちの作品を紹介します。創設期に図案科で染色を指導していた木村和一(1888-1963)は、糊防染を主とした染色を用いて、生きた図案を探求し、着物や帯に留まらず、漁村など生活の情景を染めました。木村の教え子の世代にあたる堀友三郎(1924-2014)は、染色画という糊防染やロウケツ染めによる絵画性のある作品で、自然の美しさを追求しました。わたなべひろこ(1932-)の作品の背景には、素材の多様性と可能性の対話が重ねられています。粟辻博(1929-1995)は建築空間に鮮明な色彩と大胆な模様をもたらし、生活の彩を革新しました。橋本京子(1945-)の独自の素材と織の技法によって作られた作品は、建築空間に呼応します。藤原大(1967-)は様々にサイエンスとものづくりをデザインでつなぐ活動を国内外で行っています。また特別出品する新井淳一(1932-)は、伝統と創造にまたがる布づくりの常識にとらわれない作品を作ります。
これら1930年代から今日に至るテキスタイルの多様性と、これからの可能性を感じていただけたら幸いです。