日本の現代美術の先駆者であり、独自の造形を求め続けた斎藤義重は、2001年6月、97歳で亡くなりました。その死の直前まで意欲的に制作に取り組んだ美術家でした。
斎藤義重は、1904年盛岡藩士の家系に生まれ、若い頃から美術や文学に興味を持ちました。特にロシア未来派などの前衛美術に影響を受け、写実的な絵画表現に対して疑問を抱きます。以来、生涯を通じて「もの」や「空間」と自分自身の関係を問う作品を発表し続けました。そのような理念の基に制作された彼の抽象的な作品は、1950年代末から国内外で高い評価を得るようになり、また1960年代末以降の「もの派」をはじめとする後の世代に大きな影響を与えました。
壁にかけた平面作品からレリーフ作品、そして立体作品へと、彼の作品は次第にその表現領域を拡張していくのですが、自立しながらも周りの空間と関わり合って、その場に緊張感ある空間を生み出してゆきます。
この展覧会は斎藤義重の生前に企画されましたが、その途中で亡くなったため没後初めての大規模な回顧展となりました。最初期から最後の作品まで100点余りを精選、展示して、その活動の軌跡をたどり、常に新しいスタイルを目指していた斎藤の芸術を広くご紹介します。