金と銀の美意識
「金」は長い年月を経ても変化することがなく、その性質から神秘性が付加され、崇高な輝きは太陽の光をイメージさせ、王者の威厳と風格をも象徴してきました。「銀」は、古代においては金よりも価値が高く、また「しろがね」と称され月の光に喩えられる清新な耀きとともに、「いぶし銀」という言葉に代表されるように、渋く奥行きのある耀きは、今日に至るまで金とともに特別な金属・色として享受されてきました。貨幣はもとより、仏像や経典、あるいは堂内装飾をはじめとする荘厳具、金碧の障屏画、蒔絵や沈金などで加飾された調度品、純金・純銀の器類、金襴や縫箔による装束や衣服類、刀装具や甲冑、簪や首輪などの装身具に用いられてきた「金」と「銀」の日本における文化史をたどりつつ、その根底にある美意識を探求していきます。