「仕事の中どころではなく、頭から爪先まで紅型(びんがた)で一杯です。」
芹沢は昭和3年、沖縄の固有の染物“紅型”(びんがた)に出会って衝撃を受け、染色家となる決意をします。以後最晩年に至るまで紅型は芹沢のバックボーンとなり、創作活動に大きな影響を与えました。また昭和14年に初めて沖縄に渡り、その風物に深い感銘をうけ、沖縄に取材した多くの代表作を制作しました。
晩年、芹沢はある対談の中で、「紅型は先生のお仕事のなかでは…」と聞かれ、「仕事の中どころではなく、頭から爪先まで紅型で一杯です。(中略)堅固なその型、確かなその構図、華やかな色、楽しい配色、晴れやかな持味、底にある深さ、静けさ、思えば紅型を慕い紅型を追って今日まできました。なかなかどうして卒業どころではありません。」と答えています。
この展覧会では、沖縄に取材した作品を含む約80点と、紅型をはじめとする沖縄の工芸品約100点を展示し、終生あこがれ続けていた沖縄と、芹沢との関係をたどります。