虹のような羽衣(はごろも)をたなびかせながら空を舞う飛天の姿は、日本人ならば心に思いおこすことのできる天人の姿といえましょう。
この天人は、インドに由来して、仏教の伝来とともに日本に伝わってきました。古くは法隆寺の金堂の壁画として、薬師寺東塔の水煙(すいえん)の意匠として天人が描かれています。また空海が日本に伝えたといわれる仏の世界を絵に示した曼陀羅にも飛天が描かれています。動きのない仏の像がほとんどの曼陀羅の中でも、飛天だけは衣をたなびかせ、空を舞い、手にした籠から花びら(散華)を撒く姿で描かれています。また東大寺大仏殿の正面にある八角燈篭には、音楽を奏でる天人が浮き彫りで描かれています。
美しさとやすらぎを感じさせる、こんな天人の姿を杉本画伯は、写生としても、さし絵としても描いてきました。
当館でのひとときを、心暖まる天人の姿をご覧いただきながらお過ごしください。