写真は19世紀の発明以来、社会にとって様々な影響を与えてきました。現在は圧倒的なデジタル時代を迎え、誰しもが日常的に写真イメージを手にするようになったといえるでしょう。しかし、あまりにも 日常化したために、シャッターを押しさえすれば、考えずともイメージが得られる時代になったのかもしれません。本展覧会は、そのような時代にあって、再度「写真」とは? と問いかける意図を持って企画されました。
2007年に開催された「《写真》見えるもの/見えないもの」展は、写真表現に本質的に備わる重要な両義性、つまり写真の機械的に写ってしまうイメージの超具象性と、写そうとする思念の抽象性という表裏の関係性について基本的なテーマとしました。即物的なイメージ の強さとともに、写っていない部分をいかに読み解くかは様々な表現にも通底する重要な要素です。8年の間のさらなるデジタル技術の進行を受け、新たに生まれたデジタル技術の様々な可能性とともに、現在における「写真」を再考する必要があります。 銀塩写真とデジタル写真による、その表現に差異はあるのでしょうか? 現在は、成熟した銀塩写真の技術と進行形のデジタル技術のその両方を手にすることが可能な時代です。このような時代における技術的側面を検討し、新たな融合の可能性を探ってみたいと考えます。
また、現代に生き制作発表するということは、社会に対する何がしかのアクチュアルな思考が下敷きになっています。今回はそれぞれ海外にベースをおきながら、日本をテーマにした作品を制作してきたアーティストの参加によって、現在の日本を鏡のように映し出し俎 上に乗せる意図もあります。世界と日本、日本の中の世界、「写真」を中心に写真表現を通じて社会との関係を思考することは最も重要な意味合いととらえます。