ちょうど20年前、WWWというタイトルのインスタレーション作品を同じ場所で展示しました。当時のネットワーク社会への予感をキラキラと輝く立体構造の網目に重ねたものです。そして現在、情報を始めあらゆるものが瞬時に行き交う中で、あえてその網目からすりぬけるように自らの手の感覚のみをたよりに制作しています。
紙縒は和紙を撚ったもので日本独自のものです。紙縒から生まれた紙糸は構造的にその内側に空気を含み保温性に優れ軽く、古紙を再利用して織られた紙布は庶民の衣として重宝されてきました。
もの作りにおいて工業化が進んだ現代、その隙間で廃棄される素材を用いることで、単調な日々の手仕事の中に宿る僅かな差異が生み出す豊かな感覚とともに、空間に放たれた数万の紙縒の先は過去と現在の我々を繋いでくれます。