ニューオータニ美術館では開館以来元旦より「新春展」と題し、収蔵品を中心とした展覧会を開催してまいりました。収蔵品は、ホテルニューオータニ創業者大谷米太郎翁、初代館長大谷米一が蒐集した肉筆浮世絵、西洋・日本の近代絵画で構成されています。それらの収蔵品の中でひときわ異彩を放つのが、重要文化財に指定されている池大雅《洞庭赤壁図》です。《洞庭赤壁図》は、中国を横断する揚子江の中流にある洞庭湖を中心とした名勝地を一巻の中におさめています。大雅の代表作として名高いこの画巻は、中国明時代の文人、楊聖魯の『洞庭諸勝記』に着想を得て描かれたものですが、洞庭湖を実見したことのない大雅は、この図を描くために数度琵琶湖を訪れ作画の参考にしたといわれています。細密な描写と、朱、緑青、群青などの色彩を用いて、それを金泥の線でくくる金碧山水画法の色鮮やかさが印象的な作品です。
本展では《洞庭赤壁図》を中心に、宮川長春《万歳図》、上柿芳龍《羽祢津久美人》などの新春にちなんだ肉筆浮世絵、ビュフェ《二羽の鳥(つる)》、ミレー《田園に沈む夕陽》などを展示いたします。大谷コレクションの数々をお楽しみください。