このたび、特別企画展「生誕220年 広重展 ― 東海道五拾三次を描いた天才風景絵師」(3/24~5/7)の開催にあわせ、所蔵作品の中から、国内外の芸術家たちが制作した様々な版画作品をご紹介します。
版画とは、木や金属の板などでつくられた版を紙や布に転写して、複数枚の絵画を制作する技法です。油絵や水彩画が一点物であるのに対し、版画は一つの版から同じイメージの作品を大量に生み出すことができるのです。そのため、大量印刷が必要な、聖典をはじめとする書物や布教を目的とした宗教画、紙幣や新聞の印刷などにもその技術は使われてきました。
このように一方では日常生活に密着した顔を持つ版画ですが、芸術作品としても、変容する視覚芸術の動向と密接に結びつきながら発展してきました。版という媒体によって初めて可能になる独特な表現効果に注目した作家たちは、そこに個々人の表現を探求し、時代や地域ごとに様々な工夫を凝らして技を競い、魅力的な作品を遺してきたのです。
版画は、版のつくり方によって、凸版、凹版、平版、孔版の四種類に分類されます。本展では、近現代の作家による版画作品を、技法別にご紹介します。浮世絵の復興・近代化を目指し大正時代に優れた美人木版画を制作した橋口五葉から、戦後のアメリカで興ったポップ・アートの潮流の中で版画の複数性に注目し、大量生産・大量消費をテーマにシルクスクリーン印刷による作品でスター作家として活躍したアンディ・ウォーホルまで、各技法、各作家の表現の違いを通じて、奥深い版画の世界をお楽しみ下さい。