モーリス・ユトリロは、パリの街角を描いた画家として、日本で最も人気のある画家のひとりです。このたび、モーリス・ユトリロ協会のセドリック・パイエ氏を監修者とし、ユトリロの初期から晩年までの代表作を国内外から一堂に集め、更に母ヴァラドンと、ユトリロの友人であり、母ヴァラドンの夫であった画家アンドレ・ユッテルの日本初公開作品も含めたユトリロの回顧展を開催いたします。
ユトリロは、1883年パリに生まれました。母は画家シュザンヌ・ヴァラドンで、彼女がモデルをしていた頃に生まれました。学校を卒業後、いくつかの職業につきますが長続きしませんでした。アルコールに溺れて依存症となり、その治療のため医者の勧めで母ヴァラドンが絵を描かせてみました。すると、すばらしい才能を発揮し、画家の道に進むことに決めました。母の助言はあったものの、ほぼ独学で絵を学びました。1909年にサロン・ドートンヌに初出品。この頃、白を基調とした作品を描いていましたが、これが後に白の時代と呼ばれ、高い評価を得るようになります。
1913年にウジェーヌ・ブロ画廊で始めての個展を開催。この個展は評判を呼び、名声を得ます。当館所蔵の《サン=メダール教会とムフタール通り》はこの個展の出品作であり、本展でも紹介されます。1928年にはレジオン・ドヌール勲章を受け、55年にはパリ名誉市民となりましたが、まもなく旅先のホテルで急死しました。
出展総数80余点を展観する本展は、まさにユトリロの画業と人生を辿る大回顧展といえるでしょう。