ものの形を写すことに捉われない独自の芸術を追求し、絵画、彫刻のみならず生活用品のデザインまで幅広い分野を手がけた清川泰次(1919-2020)。画家として活動する一方で、写真にも強い関心を持ち続けました。本展は、清川が残した数多くの写真から、1954年にパリで撮影された写真約20点をご紹介するものです。
清川は、戦後間もない1951年に単身アメリカへ渡り、3年間シカゴなどで制作活動を行った後、帰国の途中にパリに訪れました。この旅の間、清川はカメラを持ち歩き、当時としてはまだ珍しいカラーフィルムで、現地の街並みを写真に収めました。パリ市内を歩きながら撮影した写真には、エッフェル塔やノートルダム大聖堂をはじめとした名所だけでなく、大通りから外れた細い路地、カフェで過ごす人々など、パリの日常的な風景が写されています。また、画家・藤田嗣治(1886-1968)と親交を深め、藤田が当時モンパルナスで構えていたアトリエでもシャッターを切りました。藤田の前でポーズをとるモデルの姿を捉えたその一葉は、清川の帰国後、雑誌『アサヒカメラ』(1955年2月号)の表紙を飾りました。
近代的な建物が立ち並ぶアメリカで生活した清川の目に、古い街並みが残るパリはどのように映ったのでしょうか。同年代に制作された油彩作品とともに、清川が写したパリの美しい風景をご覧下さい。