当館設立者である菊池智(とも)(1923-2016)は昨年夏に93歳で生涯を終えました。父は炭鉱やガス会社の経営などエネルギー産業に従事した実業家の菊池寛実(かんじつ)(1885-1967)で、智自身も当館の理事長職を務めながら、事業を受け継いで実業家としても活動し、文化と経済の両面に寄与しました。
1950年代後半から現代陶芸の蒐集をはじめた智は、1983年にアメリカのスミソニアン自然史博物館で自身のコレクションによる「現代日本陶芸展」を開催します。この展覧会は好評を得て、イギリスのヴィクトリア&アルバート博物館に巡回しました。日米貿易摩擦が問題となっていた時期に日本文化を紹介し、交流が生まれ相互理解が深まるという体験は、智に文化事業の重要性を意識させるものでした。そして2003年に自身のコレクションを基に当館を設立し、現代陶芸の展覧会を開催することで普及活動を継続してきたのです。
本展では、自身の眼で選び抜いたコレクションから約60点を展示し、その足跡をたどると共に、菊池智が情熱をそそいだ現代陶芸の魅力をご紹介します。