板橋区立美術館では開館以来、池袋モンパルナス界隈に集まった画家や板橋に暮らす画家の作品を収集、展示してきました。これらの中には、日本の社会状況を反映した作品があります。
1920、30年代に最盛期を迎えたプロレタリア運動は美術界にも広まり、労働者や指導者の姿を描いた作品が発表されました。この運動を目のあたりにした井上長三郎は社会に鋭い眼差しを向け、満洲事変を発端としたアジア・太平洋戦争の時代の雰囲気を汲みとった絵画を発表します。戦時中、画材や表現に制限がある中でも、井上や彼が結成した新人画会の仲間たちなどは、画家自身の信念に沿った作品を発表しました。
戦後、日本の美術界では海外の美術作品が次々と紹介され、自由な表現や発表の場が誕生するなど目まぐるしく展開します。その中で「ルポルタージュ絵画」と呼ばれる同時代の日本の姿を描き出した絵画が発表されています。山下菊二や中村宏らによる作品は基地闘争をはじめ混沌とした戦後の社会問題を取り上げ、絵画を通じて事件の核心に迫ろうとしました。
時代と対峙した作品は、社会問題を告発するかのように力強く私たちに訴えかけてきます。今回はコレクションの中から社会や事件をテーマにした作品を紹介し、画家たちによる告発を読み解きます。
また「板橋の日本画」と題して当館が所蔵する日本画家の作品を特別展示いたします。日本画の魅力をお楽しみください。