中国・北宋から南宋時代(北宋:960-1127年、南宋:1127-1279年)にかけては、中国全土に多くの窯が築かれ、活発に陶磁器が作られました。北方では耀州窯や定窯、磁州窯、鈞窯など、南方では龍泉窯や南宋官窯、建窯、吉州窯などが台頭し、多様な陶磁器が登場するようになります。この背景には、陶磁器を享受する層が民衆へと拡大し、需要が高まったことが挙げられます。
多様な需要に応えて装飾技法も発達し、印花や刻花、劃花など凹凸による施文技法や、唐三彩の流れを受け、色釉を駆使した技法も展開されます。それらは唐時代までの技法を受け継ぐだけでなく、技術や作風を取り入れた新しい陶磁器としても生み出されています。
また、北方に勢力を持った契丹族の遼(907-1125年)やタングート族による西夏(1038-1227年)、女真族による金(1115-1234年)においても、磁州窯や定三彩技法など中原の影響を受けながら製陶が行われ、それぞれに特色を持った陶磁器が作り出されています。これらの国々が栄えた時代は、中国陶磁史の中でも特に華やかな様相を呈する時代といえるでしょう。
本展覧会では、10世紀から13世紀における中国陶磁の展開を特別出陳作品と館蔵作品によって展示します。中原のみならず、北方で展開された遼、西夏、金の陶磁器にも注目し、当時の流行や美意識を反映した中国陶磁の多様性を追います。 (担当 瀧朝子)