戦後の混乱期の子どもの本におびただしい数の絵を描きながら、日本の絵本の隆盛期を待たずに早逝した茂田井武。その画業は大切に受け継がれ、後に続く多くの画家たちにも影響を与えてきました。茂田井が亡くなった3年後に生まれ、今まさに現代美術アーティストとして世界的に活躍する奈良美智も、茂田井の絵に心ひかれるひとりです。
本展では、奈良美智が今も「新しい」と感じる茂田井武の作品を選び、展覧会を構成します。「人に見せるための絵よりも、自分との対話の中で生まれる絵にひかれる」という奈良は、20代の欧州放浪中に描かれた画帳や戦時中の日記、夢から生まれた絵物語、子どもの落書きのある絵など、折々の茂田井の内面が色濃く表れた作品を選んでいます。奈良美智の視点から、新たな茂田井の魅力が開かれます。