ウィンザーチェアがイギリスで生まれたのは18世紀前半と云われています。すべての部材に木を用い、座板に脚や背棒が直接差し込まれたこの椅子は、自然で質朴な美しさを持つ実用品として幅広い層に受け入れられていきました。
民藝運動の創始者である柳宗悦(1889-1961) と陶芸家の濱田庄司(1894-1978)は、1929年にイギリスに赴き、ウィンザーチェアをふくむ約300点の椅子を求めます。これらの家具はその後東京で展示頒布され、日本におけるウインザーチェア普及の大きな牽引役を果たしました。民藝運動の中では、柳や濱田のほか、バーナード・リーチ、芹沢銈介、池田三四郎といった人々から高い評価を得、蒐集や製作も各地でなされ、やがて西洋家具の代表として認知されていきます。
請来されている数や、それに倣った作り手の存在を考えると、日本人にとってのウィンザーチェアは、室町期に渡ってきた高麗茶碗や、民藝運動草創期に影響を与えたイギリスの古陶スリップウェアなどと同様、外邦工芸品として特別な作物といえるかもしれません。
本展では、現在日本にあるウィンザーチェアの優品と、関連する欧米の多様な椅子をかつてない規模で展観し、素材から得た確か手法と、その伝統に根差した造形美を紹介します。