色絵(中国では五彩)とは、高温で焼き上げた陶磁器に絵付を施し、再度焼成して上絵具を器表に定着させる装飾技法です。柳宗悦(やなぎむねよし)(1889~
1961)が創設した当館の色絵磁器コレクションは、中国・明時代末期に江西省の景徳鎮民窯で焼かれた天啓赤絵と、福建省の漳州窯で焼かれた呉州赤絵、そして九州・肥前地方の伊万里焼が中心となっています。
天啓赤絵と呉州赤絵は、どちらも粗製の素地と釉薬による中国製の雑器ですが、「侘び茶」の価値観が育まれていた日本ではその粗放さが逆に好まれ、茶道具や富裕層を始めとする什器として、江戸時代から用いられてきました。一方で本国の中国では残存例の確認が難しいことから、特に日本人の美意識に合致した色絵磁器と見做すことができます。
日本では肥前の有田で、1610年代に朝鮮陶工の技術により磁器生産が始まりましたが、17世紀半ば、明王朝の崩壊に伴い中国陶磁の輸出が激減すると、肥前でも色絵の技術が生まれます。大正末期に始まった民芸運動の中で伊万里焼に目が向けられたこともあり、日本民藝館にも17世紀半ばに始まった肥前の色絵磁器が所蔵されています。
本展では、柳が好んだこれらの色絵磁器を展示するとともに、濱田庄司(1894~1978)を始めとする工芸作家によって試みられた色絵の陶磁器を併せて展観し、色絵の器の魅力を紹介するものです。