かつて壁や防塁に囲まれていた城砦都市パリ。20世紀初頭には、都市の周縁に移民や貧困者が住み着き、首都が拡張されてゆきました。画家アンリ・ルソーはパリ郊外の風景に魅せられ、パリに1913年に到着した越境者レオナール・フジタ(藤田嗣治)もまた惹きつけられます。20世紀以降、世界各地に生まれた郊外の風景と、その風景を見つめる美意識は、まさにこの時代のパリの境界線上で醸成されたのです。パリの変貌する姿をうつし出したのは画家たちだけでなく、「写真家の税関吏ルソー」との異名のあるウジェーヌ・アジェを先駆者とする写真家でもありました。本展では、絵画と写真を併せて紹介し、都市の境界線に向けられた画家と写真家の視線をたどります。