公益財団法人常陽藝文センターでは郷土作家展シリーズ第246回として、「宇宙への飛翔 サイトウ良展」を開催いたします。
版画家・サイトウ良さんは色鮮やかなブルーを基調とした*セリグラフ(シルクスクリーン)作品で国内外の版画コンクールで入選・受賞を重ねてきました。
サイトウさんはパリに留学してデッサンを学んでいる時に、日本人の版画が海外でも高く評価されていることを知り版画に興味を持ちます。サイトウさんは数ある版画技法の中でも比較的新しく、広い可能性をもっていたセリグラフを選びました。色の鮮やかさと明朗な色面が特徴のセリグラフは、他の絵画技法に劣らぬ力強い表現を求めていたサイトウさんにとって最適な技法でした。
海外では製版や刷りなどを工房に外注する版画家が多い中、サイトウさんはすべての工程を自分の手で行うことにこだわり続けています。特に刷りの工程では研究を重ね、二度三度とインクを重ねて深みと厚さを出したり、インクの固さや練り方などを工夫して難しいとされるグラデーションを自在に操れるようにするなど、繊細な技術力を生かして世界中の版画コンクールで高く評価されるようになりました。また近年では版画に比べて技術的な制約のないドローイングなども手掛け、制作の幅を広げています。
今展の前期に展示するのは青が目に鮮やかなサイトウさんのセリグラフ作品です。サイトウさん専用に特別に調合してもらうという爽快な青は、生まれ育った福岡県今宿の空と海がイメージの源にあります。宇宙へ広がっていく開放感と弾けるような躍動感が表現されたセリグラフには、世の中のさまざまな問題も宇宙から俯瞰することで見方が変わってくるという前向きなメッセージが込められています。
後期に展示するドローイングやコラージュは、版画で使い慣れた和紙にアクリルで形を作った上に鉛筆やインクで納得のいくまで描き込んでいます。計画的な下準備や版合わせなど神経を使う版画技術から解き放たれて、画面に現れる色や形を追求していく作品は、版画とは対照的に、内面を掘り下げた表現となっています。
今展では前後期あわせて23点の優品を展示いたします。
公益財団法人常陽藝文センター
*セリグラフ…版となる絹や化学繊維にインクが通る部分と通らない部分を作って上からインクをのせて刷る孔版版画の一種。シルクスクリーンともいう。