本展は、住友家に伝わった漆工芸を一堂に展示する初めての試みです。
漆は光沢のある美しい塗料として器物に塗られるだけでなく、彫刻や蒔絵、象嵌など様々な技法を駆使して独自の美の世界を創造しました。特に日本では繊細華麗な作品が数多くつくられ、人々の眼を楽しませてきました。その中には意匠に古典文学を主題としたものもあり、鑑賞に一層の奥行きをもたらしています。匠の精緻な技と洗練された意匠が融合した日本の漆工芸は、まさに世界でも類を見ない独自の美術といえます。
本展では、こうした日本の漆作品の中から、京都で作られた雅な会席食器類や書斎を飾る硯箱など、おもに賓客をもてなす場で使われた華やかな調度、そして茶道や香道、能楽などの伝統文化の世界で重用された作品をご紹介するとともに、文人たちが愛玩した中国や琉球の作品もあわせて展示します。変化に富んだ華麗な漆の世界を存分にお楽しみください。