江戸時代に考案された女性の髪型は数百種類に及ぶともいわれ、多くが遊女や女歌舞伎から一般の女性へ広がったとみられています。女性が髪を結い上げるときに使われる櫛や簪は実用品ですが、同時に卓絶なる技術と繊細な装飾意匠に満ちた工芸品でもあり、髪型の普及に伴い、そうした髪飾りは急速に発展を遂げました。素材や形、装飾技法や表現などは多岐にわたり、華やかに髪を彩るとともに、掌に乗るほどの小さな形体に無限の世界が広がっています。
本展覧会では、東京都青梅市に位置する澤乃井櫛かんざし美術館のコレクションから櫛や簪、笄などを紹介するとともに、女性の風俗を伝える江戸の浮世絵や近代の創作版画を展示し、日本人が髪の装いに寄せる美意識と優れた技術をお楽しみいただきます。