島根県立美術館が所蔵する「新庄コレクション」は、松江出身の実業家で著名な浮世絵コレクターだった新庄二郎(1901-1996)が蒐集した浮世絵のコレクションです。その内容は、葛飾北斎や歌川広重の風景画を中心に、菱川師宣や懐月堂安度の肉筆画、鈴木春信や喜多川歌麿の美人画、異国風俗を描いた長崎絵など多岐にわたります。東京オリンピックや大阪万国博覧会等の記念展示で一部の作品が公開され、1970年代には「新庄コレクション展」が全国の美術館・博物館・百貨店で開催されるなど、優秀な個人コレクションとして広く知られていました。
1983年、新庄はこの優れたコレクションの多くを、生まれ故郷の島根県へ譲渡しました。葛飾北斎の《冨嶽三十六景 凱風快晴》や歌川広重の《東海道五拾三次之内》など、島根県で摺りや保存状態が良好な浮世絵を数多く見ることができるのはそのためです。
新庄二郎の没後20年にあたり、本展では新庄コレクションの軌跡を、豊富な資料や新庄が自身の蒐集品へ向けた言葉と共に振り返ります。新庄二郎が愛情を注ぎ、情熱を傾けて作り上げた「新庄コレクション」の精華を、この機会にぜひご堪能ください。