日本一の高い富士山は浮世絵でも描かれ、歌川広重の「冨士三十六景」もその一つです。また昭和の版画家、徳力富吉郎(1902~2000)も「冨士三十六景」を手掛けました。
徳力富吉郎は京都市左京区の西本願寺絵所に勤める家に生まれ、絵画を中心に制作をしていました。しかし、川西英の版画に影響を受け、京都創作版画運動の一翼を担う創作版画家となります。昭和20年、終戦と同時に版画制作研究所を設立しますが、創作版画の自刻、自摺の限界を知り、創作版画と摺師、彫師の協力による新版画の両方に取り組んでいました。昭和15年頃に制作された徳力の「冨士三十六景」は、広重の場合、江戸近郊と富士山が見える名所が対象になっているのに対し、富士山近辺の風景が対象であり、富士山をダイナミックに表現した作品が多いのが特徴です。
本展覧会では江戸と昭和の画匠二人による「冨士三十六景」の名品を同時にご紹介します。富士山風景の変遷を感じて頂けたら幸いです。