しりあがり寿(1958-)は、「弥次喜多 in DEEP」や朝日新聞に連載中の「地球防衛家のヒトビト」など独特のシュールなギャグマンガで知られるばかりでなく、近年はエッセイや演劇、音楽、ゲームの分野でも幅広く活躍しています。また国内外の展覧会で墨絵や映像を用いたインスタレーション作品を発表し、アーティストとしても高く評価されています。
いずれの仕事にも通底するのは、現代の世相の暗部を照らし出す批評精神と社会の弱者に寄り添う優しさです。それらをユーモアで包み、唯一無二の世界を創出してきました。東日本大震災後の日本を描いた『あの日からのマンガ』などは記憶に新しいところです。
美術館での初の本格的な個展となる本展では、しりあがりがここ数年強く関心を抱く「回転」をテーマに、新旧の作品を織り交ぜながら、マンガという枠に収まらない表現者としてのしりあがり寿像に迫ります。
グルグルグルグルグールグル♪ やかんから美術作品、映像、日用品まであらゆるものが会場で回り始じめる大規模な新作は必見です。
回転とは何か?
* - 停滞の美学か、物語からの脱却か、存在の根源か、インスタント存在アップ術か。-
ギャグとシリアス、ナンセンスと哲学、サブカルチャーとアートなど様々な境界線上から独自の表現を試みるしりあがり寿の感性が、観る者の脳内を刺激することでしょう。
常識を揺り動かす、この不思議な「回転」をお楽しみください。
* しりあがり寿 『しりあがり寿の回 ・ 転 ・ 界』 「あとがき」 より