今日、ありとあらゆる情報伝達メディアが、産業や観光、興行、出版など、様々な分野のものごとを宣伝しています。それらは社会的背景を反映するとともに、芸術的な側面を持ち合わせたものも多く、見る者を強く惹きつけます。
ポスターにおいて、宣伝という“実用性”と私たちの心を掴む“芸術性”が両立したのは、19世紀後半のヨーロッパにおけるカラーリトグラフ・ポスターから始まったと言えるでしょう。黎明期を支えたシェレ、曲線や植物紋様をふんだんに用いたミュシャ、商品のイメージを簡潔に描いたカピエッロ、幾何学的でダイナミックな構成のポスターデザインを生み出したカッサンドルなどが活躍しました。
時代が進むにつれて変化する造形意識に加え、技術的な発展もポスター制作に大きな影響を与えました。特に20世紀以降、写真の利用が増え、加えて1980年代以降は、コンピューターの活用などにより、幅広い表現が可能になりました。
本展では、当館のポスターコレクションの代表作約100点を展示します。リトグラフによる19世紀の大型広告をはじめ、近現代に制作された国内外の優れたポスターデザインを紹介し、スタイルや印刷技術の変遷をたどります。