戸栗美術館は昭和62年(1987)、全国でも珍しい陶磁器専門美術館として開館いたしました。伊万里焼や鍋島焼といった肥前磁器を中心に、中国や朝鮮半島の陶磁器など約7,000点に及ぶ収蔵品の礎を築き上げたのが、当館創設者 戸栗亨(とぐりとおる)です。
戸栗は、第二次世界大戦以後の日本の生活文化の著しい変化を前に、生活の道具の収集・保存を志すようになります。次第に中でも古陶磁に惹かれ、熱心に求めました。その膨大なコレクションが初めて世に出たのが、1984年11月から1985年1月にかけて渋谷区立松濤美術館にて開催された『戸栗コレクション 有田の染付と色絵-伊万里・柿右衛門・鍋島-』でした。100点以上が出展され、「有田磁器の特色としての国際性と多様性が十分にうかがいうる」と評されたこの展覧会は、戸栗コレクション展示の原点とも呼べるものです。
今展では当時の出展品を再展示。来年に迫った開館30周年を前に、肥前磁器の名品とともに、戸栗コレクションのはじまりを振り返ります。