映像やメディア技術の発達は、世界の見え方を変えるだけでなく、わたしたちの身体やそれをとりまく社会のあり方にも少なからず影響を与えてきました。複数の他者と同時に接続可能となったグローバルな情報ネットワーク社会。そこでは、不特定多数との情報共有や自由な増殖・派生を前提とした新しい創造の形が生まれる一方で、個々人のあり方や関係性もまた大きく変質しています。複製可能であること、マルチプルに(同時に多数)存在すること。それはオリジナルだったはずのものへの疑問符となります。マルチプルな(多くの部分や要素が織りなす)営みの果てに、「未来」は刻々と形作られています。「未来」は既にわたしたちの中でも起こっているのです。
第9回恵比寿映像祭では、「マルチプルな未来」を総合テーマに、複製技術をともなう映像の特質と、その発達とともに個人や社会にもたらされている変化が指し示すものについて考えたいと思います。