この展覧会は東京藝術大学美術学部彫刻科教員が企画し開催するもので、1997年に始まり今回はその9回目になります。
成長から成熟へ社会の移行が唱えられる時代を迎えても、消費のスピートは衰えず社会の価値はめまぐるしく変化を続けています。角がとれてのっぺりとした平坦で均質なこの時代に、ものを作る、とりわけ彫刻をつくるという非効率的ともいえる行為は時代錯誤なのかもしれません。
近年、美術が様々に姿を変え、アートとして社会に浸透しその存在意義は高まっています。しかしながら、アートの中で「彫刻」という概念が必要とされなくなる危惧が消えません。
彫刻を作るならば困難に立ち向かう「気概」を持ち、やはり未来につながるものを目指すべきと考えます。それには、素材と歴史に向き合いながら、自己の向こう側からやってくる「意外」を迎える準備を怠ってはいけないと思うのです。
多様な美術表現の溢れる現在、荒野ともいえるアトリエで、彫刻の可能性を信じ粛々と作り続けている作家達の「気概」と、作り手の意図を越えた「意外」をも取り込んだ現代の彫刻表現を発信します。