粟津則雄(あわずのりお)氏(1927生)はオディロン・ルドンやパウル・クレーなど芸術家の評伝をはじめ、アルチュール・ランボーやカフカといった詩人・哲学者の訳書や評論など、フランスの文学、美術、音楽に対し深い造詣を持ちながら、正岡子規や萩原朔太郎、小林秀雄にも高い関心を抱き、研究・評論をつづけてきました。当館は2014年度に粟津氏の収集した美術品の数々、約100点の一括寄贈を受けました。その中には評論・評伝の中で取り上げたルドンやジョルジュ・ルオー、アントニー・クラーヴェの版画、著作の表紙を飾った駒井哲郎、柄澤齊(からさわひとし)、親しく交流した麻田浩、池田満寿夫らの作品が含まれています。
それらは、長年に亘り書斎に飾られた愛蔵の品で、粟津氏の眼、表現とともに歩み、その思考の一端を読み取ることができる意義深い作品ばかりです。
2006年より出版が続いていた『粟津則雄著作集』(思潮社)が完結することを機に当館所蔵の粟津コレクションの中から選りすぐりの作品、約50点を紹介します。