最近、以前に読んでいた澁澤龍彦さんの「高丘親王航海記」を3年もかかって書写した。「航海記」から再び一つの啓示を与えられた。長くアドヴァタイジングで沸騰していたグラフィックデザインの海は、海底火山に煽られるように熱かった。けれども私には、60年代、70年代の、デザインの新鉱脈探しに奮闘した「実験の時代」のデザインの海の方が、さらに熱く感じる。見れば今のデザインの海は、星座を読むロマンティストより、海図が読めるタフな船乗りじゃないと航海が難しい、私にとっては荒れ模様の波浪注意報。そんな海へ冒険に出る、若きチャレンジャーたちにエールを送るためにも、我がカイコ的「コーカイ記」を、早急に展じなければならないだろう。